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第1回投稿 山西哲郎先生「イタリア・トスカーナの旅」

山西哲郎 2018年3月  
 イタリア・トスカーナ 3度目はラン・自転車マラニック
 春は再生の季である。裸の大地に草木の芽が顔を見せ、花が咲き、緑の葉で自然の風景が甦ってくる。我ら自然たる人間も、生まれるのは一生に一度ではなく、毎年春になれば生命の息吹を持って再び生命を活性化する。
 そう思い始めたこの頃、僕は冷たい風に暖かさを少しでも感じると、自然のなかに春を探すように走りだす。
 今年の3月、3年連続してイタリアのトスカーナに出かける。 
 イタリアの中央の丘陵地に位置するトスカーナは、農場や牧場が広がり、夏はひまわり、春は麦が美しさをくれる。田舎育ちの僕には、1950年の頃の故郷を思い出させくれる。そして、村や町の教会、城そして民家は1000年以上前の石の建造物であり、長い歴史を超えた風景として自然に、心地よく心と体の中に入ってくるのである。
 今回はトスカーナの中世の道として、ゆっくり走ってみようとプランを立てる。そこで、かつて、箱根駅伝の選手として指導した片山君を「退職したのだから、のんびり走る旅をしてみないか」と誘い一緒に出かける。
できるだけ長い距離を走ってみたいと考えると、ずっと走り続けているだけでは疲労とともに、足の痛みに耐えなければならず、風景やそこに住む人たちと触れ合う楽しさから程遠くなってしまう。同時に、着替えや補食や水分を携帯するには自転車を使えばいいと、地元のランニングの指導者のジャンボローネさんに自転車を1台借りる。彼はこの地元で、ランニングのトレーニングキャンプ地として、病院などと連携してイタリアのアスリートやアフリカのジュニアのランナーを指導しているだけに、地元の地理にも詳しいだけに走るコースも紹介してもらう。
 片山君と二人一組となって、およそ5㎞ごとにランと自転車ランを交代して、1日50㎞、2日で100㎞を目指してゆっくり走ることが可能になり、夜はお城に接している中世風のホテルに泊まることもできたのである。
 中世の道から足元に雑草の小さな花に気づき遠くには、緑一色の麦畑を望む早春。牧場の羊や牛などはまだ寒いため家屋生活で見えず。そして、路面は舗装は少なく、足に優しい土道が多く、田園や森や林、集落をつなげるよう続いている。まるで中世の騎士が馬で、あるいは、民衆の歩く旅をする感覚となってしまう。地元の人に「この道は○○に行けますか」とうまくイタリア語のできなくても、身振り手振りの笑顔で教えてくれる。
 2日の旅を終え「僕たちだけで楽しんでいてはもったいない」と二人は言葉を交わしながら、すでに来年のプランを立て始めるのであった。

2018/7/13